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玉木宏樹(代表) 作曲家・ヴァイオリニスト

MIDIによる純正律演奏のすすめ(第2回)/田向正一

前回,MIDIで適切な設定を行うことにより,純正律を始めとする自然音律での演奏が可能であることを述べました。今回は,具体的な方法を論じる前に,これらの音律がどのようなものなのか簡単に解説します。

メロディのための音律

一般に,音楽はメロディ(旋律),ハーモニー(和声),リズム(拍子)の三要素で構成されています。これらのうち,メロディとハーモニーとでは好まれる音律が異なり,メロディにはピタゴラス音律が適しているとされています。この音律は,西洋だけでなく中国では三分損益法,日本では順八逆六という名称で古くから存在しているように,異なる民族において後世に引き継がれています。

ピタゴラス音律とは,純正な完全五度の組み合わせによって音程関係を決定するものです。具体的には,まず基準となる音を決めた上で,その音に対して 3/2の周波数関係となる音を決めます。前回提示した実例に合わせると,基準となる音は“C”であり,その音に対して3/2の周波数関係となる音は“G”となります。

次に“G”の音に対して3/2の周波数関係となる“D”の音が導かれます。なお,オクターブ内に収まるように,適宜オクターブ上げ下げすると良いでしょう。この作業を繰り返すと“A→E→B→F♯”の音が得られます。今度は反対に,基準となる“C”音に対して2/3の周波数関係となる純正な完全五度下の音を決めていくと“F→B♭→E♭→A♭→D♭→G♭”の音が得られます。

ピタゴラス楽譜

ピタゴラス音律

このようにして作られたのが“C”の音を基準としたピタゴラス音律です。下図で隣り合っているすべての音は,純正な完全五度の音程関係となっています。

ピタゴラス音律

また,これらの音を音階の順に並べると,以下のようになります。

音階 周波数比 平均律比
C 1 同じ
D♭ 256/243 低め
D 9/8 やや高め
E♭ 32/27 低め
E 81/64 高め
F 4/3 僅か低め
F♯ 729/512 高め
G 3/2 僅か高め
A♭ 128/81 低め
A 27/16 高め
B♭ 16/9 やや低め
B 243/128 高め

ピタゴラス音律の音階は,平均律と比較して全音が広く,また半音が狭く構成されているため,この特徴がメロディに独特の味わいを与える効果を持っています。


音律解説・純正律(その1)
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